脳と栄養のシンポジウム9-10廣瀬久益先生編-ナイアシンとボクシング

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

掲載については溝口クリニックよりご許可を頂いています。

~一部・または全部における引用・無断転載をお断りします。

精神科医療について

『脳と栄養のシンポジウム』の抄録から廣瀬先生のコメントを引用する。

精神科における栄養アプローチの実際

今日の精神科の治療は薬物療法に偏りすぎ、薬物療法が無効なものを「難治例」として片付ける。これは治療放棄の医療だ。

薬物療法は精神科において有用であるが、本当に薬物が精神の病気を治すのだろうか。私は薬物は「人間の持つ自然治癒力」を上手に引き出すものであると考える。もし、薬物単独で精神の病気を完治できるなら、精神(人間性は)は薬物によって変性し、もはや自分が自分でなくなるのではないか。そういった薬物は麻薬と同じではないか。病気を治すのはあくまでも自分である。うつ病の約7割は病院にかからず自然に治っていることがその証拠の一つだろう。

薬物に頼りすぎた治療は慎むべきである。そして、自然治癒力を引き出す全ての可能性(栄養、運動、精神療法・・・・など)に挑戦すべきである。私にとって、分子整合栄養医学との出会いと実践が、このことをより明確にした。

社会復帰を支援する取り組み

例えば子どもが心療内科にかかった時、「学校は無理して行かなくていいよ」「今は休む時だから、無理しないで休んだらいいよ」と心療内科などではいわれることが多い。
ムリは禁物  エネルギーがないのですから・・と

勿論、体や気持ちが上手くコントロール出来ず、焦ってもがいている患者に追い込むような言葉を掛けられないのでありがたいが・・

けれどただ漠然と「無理しないで、休んで」というのでは、あまりに消極的すぎないだろうか?

この指導はそのままで留まる事を勧めているように感じた事も感じる。

端から見ていて患者に、ただ留まっているしかない方法が本当にいいことなのか、他に何か手だてはないのか?疑問に思うこともある。

医師にしてみれば「そうやって焦ると良くない」とか「疲れ切っている状態なんだから無理です」といわれ、じっとしている事が本当にいいのか? 薬を飲んで冬眠しているような状態・・・と。

一般の心療内科の医師は多分、こんな感じだろう。

他の術を持っていないのだから、仕方がないのかも知れない。けれど患者は毎日毎日生き生きとしたいはず。もっとよりよく生きたいはずだ・・・。

廣瀬先生は独自の方法で社会復帰のための取り組みを多方面にされてきた。

何とか患者をよくしよう、社会復帰させようと言う熱意を感じた。

現在の精神科治療・心療内科治療ではなかなか患者の復帰に向けての取り組みがなされていないと思うけれど、治療と共に患者の社会復帰を見据えた様々な取り組みが廣瀬先生のクリニックでは成果を上げているという。

これからの精神科医療はこうした受け皿としての取り組みも重要だと言う事に、同意もし、このような取り組みを心強く思った。

治療法導入の歴史

精神療法-向精神病薬1983~

集団精神療法 1985~

漢方薬 1989~

運動アプローチ-心身の活性化 1995~

栄養アプローチ 2004~

長期休職者のリワークプログラム

2007~『脳と栄養のシンポジウム』の抄録から一部引用

ナイアシンとボクシング

廣瀬先生は2004年から治療にサプリメントを使用開始し、2005年には分子整合栄養医学と出会い、ナイアシン欠乏症・鉄欠乏症を中心に治療をされてきた。

統合失調症の患者さんを詳しく診ていくと、治療にナイアシンが有効な例が多くみられたと言う。

勿論他の栄養素(医療用サプリメント)や食事療法も必要だけれど、中にはナイアシン服用で症状が良くなってしまい、治療を継続しようと思っていたけれど、患者本人が通院しなくなってしまった例もあったと言う。

患者個人個人で当然だが栄養素(医療用サプリメント)量も違うけれど、カナダのホッファー博士のようにナイアシン一日グラム単位で増量し、様子を見ながら治療することも試みて成果を上げているという。(2006 年バンクーバーでナイアシンによる治療症例・842例の発表)

上記にある廣瀬先生のコメントの中にもあるように、一般的な薬剤投与だけでも、栄養素(医療用サプリメント)投与だけでも成果は上がりにくい。

穏やかで柔和な先生のお顔からは何とも想像がつかなかったのだけれど、運動療法の一つとしてボクシングを取り入れていらして、実際にスポーツウェアにグローブをはめ、リングで患者さん相手とトレーニングをされている映像も流れた。

精神疾患に限った事ではないが、適度な運動が心身の調子を向上させる。

クリニックの隣にジムがあり、そこで患者さんと汗を流す・・・

なかなか出来る取り組みではない。

社会復帰の為の適切なアプローチ・受け皿がこのような形でどんどん増えるといいと思った。